ジルコニア製インプラントのメリットや特徴を解説
▼目次
インプラント治療は、歯が失われた部分に人工の歯根を埋め込み、噛む機能、見た目、発音を回復するための歯科治療法です。インプラントに使用される素材にはさまざまな種類がありますが、近年注目されているのがジルコニア製インプラントです。今回は、ジルコニア製インプラントの特徴やメリット、リスク、他の素材との比較について詳しく解説します。
1. ジルコニア製インプラントとは?
ジルコニア製インプラントとは、二酸化ジルコニウムという酸化物から作られた非常に硬いセラミック素材を使用したインプラントです。
もともと医療分野では肩などの人工関節や歯科補綴物(クラウンなど)に利用されてきた素材で、その高い強度と耐久性が注目され、インプラントにも応用されています。
ジルコニア製インプラントは、金属製インプラントと比較しても耐久性が高く、骨との結合(オッセオインテグレーション)が良好であることが特長です。また、金属アレルギーのリスクが低く、アレルギー体質の方にも適した選択肢となります。
2. ジルコニア製インプラントのメリット
ジルコニア製インプラントには、いくつかの重要なメリットがあります。
①審美性に優れている
ジルコニアは自然な歯の色に近い素材であるため、特に前歯など目立つ場所に使用する際には、見た目が非常に美しい仕上がりになります。金属インプラントと違い、金属的な色が見えないため、自然な外観が得られます。
➁金属アレルギーのリスクが低い
ジルコニアは金属ではないため、金属アレルギーを引き起こす可能性が非常に低い素材です。金属アレルギーを持つ方にとっては、魅力的な選択肢となります。
➂生体親和性が高い
ジルコニアは骨と結合しやすい、いわゆる生体親和性が高い素材です。これはインプラントの長期安定性に寄与します。ジルコニア製インプラントは、顎の骨としっかりと結合することで、長期間にわたって安定した噛む力を維持することが期待できます。
④耐久性と耐腐食性が高い
ジルコニア製インプラントは、高い強度を持ち、長期間の使用に耐えることができます。また、摩耗や腐食に強いため、日常生活における使用においても安心です。
3. ジルコニア製インプラントのリスクや注意点
ジルコニア製インプラントには多くのメリットがありますが、リスクや注意点も存在します。以下にその主な点を解説します。
①加工が難しい
ジルコニアは硬い素材であるため、加工には高度な技術が求められます。経験不足の歯科医師や設備が不十分なクリニックでは、適切なインプラントが作成できない可能性があります。治療を受ける際は、信頼できる歯科医院を選ぶことが重要です。
➁長期的な臨床データの不足
ジルコニア製インプラントは比較的新しい素材であり、チタン製インプラントに比べると長期的なデータが少ないです。これにより、長期間使用した際のリスクや問題点についての情報が不足しています。選択を検討する際は、歯科医師と相談し、リスクを十分に理解することが大切です。
➂破損リスク
ジルコニアは高い耐久性を持つ一方で、強い衝撃には弱いという特性もあります。特に、咬合力が強い部位や歯ぎしりをする方には、破損のリスクが高まります。そのため、咬合状態や生活習慣に応じた適切な治療とメンテナンスが求められます。
④治療費が高くなる傾向がある
ジルコニア製インプラントは、製造や加工にコストがかかるため、治療費も高くなる傾向があります。審美性や金属アレルギーのリスク回避を重視する方にとっては魅力的な選択肢ですが、費用面での負担を考慮する必要があります。
4. ジルコニア製以外のインプラントの素材を解説
ジルコニア以外にも、インプラントにはさまざまな素材が使用されています。代表的な素材について解説します。
①チタン
チタン製インプラントは、インプラント治療で最も一般的に使用されている素材です。
チタンは骨との結合性が非常に良く、生体親和性が高いため、長期にわたって安定したインプラント治療が可能です。また、チタンは耐腐食性も高く、口腔内で長期間安全に使用できます。多くの臨床実績があり、信頼性が高いため、多くの症例で使用されています。チタンは金属で、アレルギー反応を引き起こしにくいとされてはいますが、全く発症しない、と言い切れないため、金属アレルギーのある方には慎重な判断が必要です。
➁チタンジルコニア製インプラント
チタンとジルコニアを組み合わせた素材で、チタンの強度とジルコニアの審美性を併せ持つのが特徴です。特に前歯部分など審美性が求められる部位に適しており、患者さんのニーズに合わせた治療が可能です。
この素材は、見た目の良さと金属の強度を兼ね備えているため、ジルコニアやチタンのどちらか一方の特徴だけでは対応しきれないケースに利用されることがあります。
➂ハイブリッド素材
一部のインプラントでは、チタン製インプラントの基部にセラミックのアバットメントを装着し、見た目の自然さを重視するハイブリッドな方法が採用されています。これにより、強度を保ちながら審美性を高めることができ、特に審美性を重視する症例や金属アレルギーのリスクがある症例に効果的です。
他の素材と比較すると、チタン製インプラントは耐久性、実績、骨との結合性において優れていますが、審美性やアレルギーのリスク面でジルコニア製インプラントに劣ることがあります。一方で、ジルコニア製は加工が難しく、施術する歯科医師の技術や設備も求められるため、クリニックの選択も重要です。症例や患者さんの状況によって最適な素材を選択することで、長期的に快適で健康な口腔環境が実現できます。
ジルコニア製インプラントは、高い審美性と生体親和性を持つため、見た目を重視する患者にとって魅力的な選択肢です。金属アレルギーのリスクが低い点も大きな利点ですが、加工が難しく、長期的なデータが不足していることや、破損リスク、治療費が高くなる可能性もあるため注意が必要です。
治療を検討する際は、信頼できる歯科医師と相談し、自分の口腔内の状況やライフスタイルに合った素材を選ぶことが重要です。定期的なメンテナンスを行い、長期間快適に使用できるインプラントを目指しましょう。
横浜市緑区の歯医者 長津田おさまる歯科クリニックでは、インプラント治療をはじめとした口腔外科治療を提供しています。インプラント治療についてお困りの方は、いつでもお気軽にご相談ください。
監修:長田 裕行
経歴:
昭和大学歯学部卒業
北海道大学予防歯科医局
熊澤歯科クリニック研修
神奈川県内歯科クリニック分院長
長津田おさまる歯科クリニック開業